康の基本となるのは、腸内環境と言われています。私たちは日々口から食物を摂り、栄養素を消化・吸収して身体を作っています。腸内には100兆個以上の腸内細菌が生息し、人間と共生しバランスを保ちながら腸内細菌叢を形成しています。
これらの細菌は、発酵やビタミンB群やビタミンKの産生も行っています。
腸は、飲み込まれた食品や飲み物や細菌など様々な「異物」と直面し、身体にとって有益なものと不利益にまるものを認識して私たちを守る最前線です。
多くの免疫細胞が腸に存在し、約8割の免疫は腸の状態で決まると言われています。
ですから免疫力をアップさせたければ、まず一番に腸内環境を整える必要があるのです。
その他にも、腸はセロトニンなどの神経伝達物質を産生し、独自の神経ネットワークを持っていると同時に、腸脳相関という言葉の通り脳神経とも密接な関係で結ばれています。
おなかが満たされると幸せな気持ちになるのは、このおかげです。
精神的な問題が、腸を治すことで改善されることもあります。
腸内環境はバリウムだけでは分からない
腸の検査といえば、バリウム検査や内視鏡を思い浮かべる人がほとんどでしょう。
これらは形態を見る検査ですので、胃炎や潰瘍、ポリープや癌があるかどうかは分かりますが、免疫や腸内細菌などの機能的なことは評価できません。
アンチエイジングでの腸の検査は、3段階に分けられます。
まず、食物アレルギー検査です。食物アレルギーには、即時型と遅発型があり、即時型は食べてすぐに蕁麻疹や喘息などの激しい症状を来すもので、IgE抗体が関与し肥満細胞や顆粒球からヒスタミンが放出されます。
この反応は一度発症してしまうと、生涯にわたりその食べ物に対する反応は続きます。
これに対して、遅発型アレルギーは食べ物を摂取してから24~72時間後(最長7日後)に症状が現れますが、それほど強い症状ではないためほとんどの人は気が付きません。
また、リュウマチや間質性肺炎、橋本病などのいわゆる自己免疫疾患とも関連があると言われています。
遅発性アレルギーは、IgG抗体が関与し、アレルゲンとなる抗原とIgG抗体が免疫複合体を形成することによっておこります。
血液中に大量の免疫複合体が存在し全身へ運ばれるわけです。
時型アレルギーが一生続くのに対して、遅発性アレルギーは通常は適切に対処することで3~6か月後には再び摂取できるようになります。食物アレルギー検査の結果が重篤な方には、消化器系総合検査(便検査)や腸管侵漏検査(尿検査)をお勧めします。
便検査では、腸内細菌叢の善玉菌、悪玉菌、境界悪性菌がどのような割合で存在しているか、イースト菌の異常増殖はないか、消化酵素、消化の状態、チゾチームやラクトフェリンなどの炎症兆候、sIgA、乳酸菌やビフィズス菌から産生される短鎖脂肪酸などが評価できます。
悪玉菌に対しては、どの薬剤や天然成分で治療すればよいのかを調べる感受性検査も同時に行われます。
腸管侵漏度検査は、マンニトールとラクチュロースの大きさの異なる二つの非代謝性糖分子を飲んでもらい、腸粘膜からそれぞれどのくらい吸収され腎臓から濾し出されるかを測定することで、腸粘膜の透過性を評価します。
腸の粘膜では、アレルギーによる腸管の慢性炎症によってきれいに並んでいた腸上皮が乱れて隙間が生じ、その間から通常では吸収されないはずの未消化の大きな分子が通り抜けて粘膜下に達するためにさらに炎症・透過性が亢進していきます。
これを腸管侵漏症候群(Leaky Gut Syndrome)といい、腸管毒性や免疫異常が進んで自己免疫疾患や脳血管関門の異常などの全身疾患へと広がっていくのです。