「幹細胞」という言葉を最近よく耳にします。
幹細胞というのは、自己複製能力と様々な細胞に分化する能力(多分化能)の両方を兼ね備えた細胞で、胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞、成体幹細胞などがあり、これは、正常細胞の話ですが、実はがん細胞にも「がん幹細胞」があることが分かってきました。
先日NHKのクローズアップ現代でも取り上げられましたが、がん細胞の中にも幹細胞の性質をもったものとそうでないものがあり、がん幹細胞をうまくコントロールすることが重要であることが指摘されています。
そもそもがんの組織というのは、がん細胞のみが増殖しているわけではなく、周りにがん関連線維芽細胞や内皮細胞、周細胞、免疫炎症細胞、局所や骨髄由来の間質幹細胞と前駆細胞など様々な種類の細胞が混じり合ってがん細胞が増殖しやすい環境を作り上げています(微小環境といいます)。
がん細胞が増殖するには、栄養や酸素が必要で、そのために必要な血管や形を維持するための線維質を作り出すことでますます大きくなっていくのです。
れらの周辺細胞に働きかけて微小環境を形成する能力を備えているのが、がん幹細胞です。ですから、がん幹細胞が血液中に存在すると、どこか離れたところに定着して新たな微小環境を作り出して、転移巣を形成するというわけです。
CTCは、がん幹細胞が増殖して幹細胞様の特徴を持った細胞で、このCTC検査で検出されるのは、がん幹細胞とそれが増殖複製されたがん幹細胞様腫瘍細胞です。
通常のがん細胞は、循環している血液の中では生き残ることができません。
しかしCTCは、眠ったままの状態で血液の中で生き続けることができるため、何年も経ってから転移・再発が出てくるということが起きるのです。
ですから、がんと診断されたり治療を受けた場合、再発や転移がどの程度起こってくる可能性があるかや、どのように予防したらいいのかを知る道標として、CTC検査は非常に意味があると言えるでしょう。