遅発性食物アレルギーと腸管免疫についてご紹介したいと思います。
皆様も「免疫」という言葉には耳馴染みがあるかと思いますが、免疫の8割は腸内環境で決まると言われていることをご存知でしょうか。
その中でも特に小腸は、消化・吸収の中心であり、最大の免疫機構が存在する場所。
口から入った食べ物や外界からの異物は、胃酸によって殺菌され、小腸へ送り込まれ、そこで吸収可能なある程度の小さな物質に消化・分解され、病原菌や身体にとって有害な物質は吸収せず、栄養素など必要なものだけを選んで取り込んでいます。
この過程で、活躍するのが、白血球やリンパ球(T細胞、B細胞)などの免疫細胞です。
身体にとって不利益なものを「抗原」として認識し、それらから身体を守るのが免疫と呼ばれる仕組みなのです。
免疫には、大きく分けて細胞性免疫と液性免疫の二つがあり、細胞性免疫は、抗原に対して白血球やナチュラルキラー細胞が直接攻撃を行うもので、液性免疫はB細胞が関与して抗体を産生して抗原を標識し、白血球が攻撃させやすくするものです。
抗体の種類には、IgA, IgE, IgM, IgG, IgDの5種類があります。
食物アレルギーとは
食物アレルギーとは、本来必要な栄養素である食物を異物抗原として認識し、抗体が作られることによっておこる免疫反応を指してこう呼びます。
通常、食べ物は異物ではないので抗体が作られることはないはずですが、添加物が入っていたり、変性していたり、粘膜のバリアが弱っていたりすると、異物として認識されて免疫反応がスタートします。
食物アレルギーには、即時型と遅発型があります。
即時型食物アレルギーは、IgE抗体が関係しており、食べてすぐに蕁麻疹や呼吸困難など強烈な症状を来すので、原因の特定が容易です。
これに対して遅発型は、食べてから24~72時間後に生じることが多く症状も緩徐であるためにほとんどの方が原因に気が付きません。
遅発型は、IgG抗体が関与し血液の中で抗原・抗体複合体を形成し全身を巡ります。
また、IgGは胎盤を通過する特徴がありますので、お母さんの抗体は赤ちゃんにも移行することになります。
遅発型食物アレルギーは、アメリカでは50%以上の国民が持っていると言われ、日本人もおそらく同等、あるいはそれ以上にあるのではないかと推測されます。
アレルギーの原因として特に多いのは、鶏卵、乳製品、小麦です。
遅発型食物アレルギーの症状
抗原・抗体複合体は血液中に存在しますので、全身の様々なところで炎症が起こります。以下、代表的な症状です。
気が付かないままに抗原となる食べ物を摂り続けていると、関節炎や甲状腺炎などの自己免疫疾患、動脈硬化、認知症など様々な病気に発展すると言われています。
小腸の粘膜も、慢性的に炎症が起こってくると、上皮が肌荒れのように荒れて隙間が空いて、通常では通さないような大きな分子や病原体を通してしまい、ますます炎症を加速させることになります。
このような状態を腸管侵漏症候群といい、自己免疫疾患やセリアック病、クローン病、アトピー、炎症性関節疾患などを引き起こすことがあります。
遅発型食物アレルギーの治療
即時型アレルギーの食材は基本一生涯食べられないのに対し、遅発型アレルギーは、きちんと対処すると半年後には反応が収まって再び食べられるようになります。
基本的に、強い反応が出ている食材は、3~6か月は除去食、すなわち食べないでおくということになりますが、その他の食材はローテーションダイエットを行います。
治療方法は、反応している食品の数や強さによって異なります。ほとんどの食品に反応が出ているような方は、除去食は不可能ですので、粘膜上皮を修復・再生するような栄養素やサプリメントを使う方法を勧めています。
食事がアンチエイジングの基本
健康に気遣う皆様は食事にも気を付けられていると思いますが、よいと思って食べ続けているものが、実はアレルギーの原因だったとしたらとても哀しいことです。
特に忙しく過ごしていると食生活も偏ってしまいがちです。
遅発性食物アレルギー検査を受けると、お買い物に行って食材を選ぶ基準が変わり、毎日の食事が変わってきます。早い人は、1週間も経たないうちに倦怠感や頭痛が回復する方もおられます。
自分の日々の食生活を正しく見直すことが、アンチエイジングへの第一歩です。そのきっかけに検査を活用してみてはいかがでしょうか。